アロマテラピーの歴史香りと体の不思議な関係

■アロマテラピーとは
アロマテラピー(芳香療法)とは、ハーブ(薬用植物)や果実などから抽出した100パーセント天然のエッセンシャルオイル(精油)の香り成分を様々な方法で体内にとりいれ、心身の健康や美容に役立てる植物療法の一つです。エッセンシャルオイルにはそれぞれ様々な特性があり、心を癒したり、リフレッシュさせたり、人間が本来もっている治癒力を高め、心と体のバランスを正常な状態にもどす働きがあるといわれています。アロマテラピーを日々の暮らしに取り入れることによって、適で心豊かな日々を過ごすことができます。

■香りの持っている力
たちは、さまざまな香りや匂いに囲まれて生活しており、それらは体に対して想像以上に大きな働きを持ってぃます。たとえば、オレンジやレモンなど柑橘類の香りは、うつ病、神経症といった精神科の症例に効果をあげることがわかっています。これは個人的な記憶や主観との関係とは別に、香りの成分自体が持っている作用といわれています。植物にはさまざまな香りがあり、それぞれに特有の作用をそなえています。その中から私たちの体や心に役立つものを選び出し、最も効果的な方法で利用しようというのがアロマテラピーの基本になる考え方といえるでしょう。

■キーワードは「エッセンシャルオイル」
植物の持っている力を自然に近い形で利用していくという考え方は、東洋医学の漢方やハーブも同じです。広い意味ではアロマテラピーと同じジャンルといえます。なかでも、ラベンダー、ロ―ズマリー、カモミール、バジルなどのハーブは、アロマテラピーの生みの親ともいえる存在です。ただし、現代のアロマテラピーは、漢方やハーブのように、植物をそのままの形で利用したり、煎じたり,する方法ではなく植物から香りの有効成分を抽出して作ったエッセンシャルオイルを使います。エッセンシャルオイルを希釈するための手段としてほかの素材を使うことはありすが、このエッセンシャルオイルを使うかどうかが、アロマテラピーとほかの植物療法との違いなのです。

■ホリスティックな自然療法
エッセンシャルオイルが利用方法でのキーワードとすると、ア口マテラピーの目的を示すキーワードは「ホリスティック」といえます。ホリスティックは「全体的」といった意味ですがアロマテラピーでは「体のトラブルを部分的にだけでとらえずに、心も含めた全身的なもの」と解釈されています。
精油の成分には薬理作用があり、それを突き詰めていくと医療と重なる部分が多くなります。
しかし、ホリスティックなアロマテラピーは、いわゆる医療ではなく、植物の香りの力を借りながら、穏やかにトラブルを和らげ身心の健康を取り戻し、また維持する自然療法といえます。

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アロマテラピーの歴史

■古代からあった芳香の知恵
植物が持っている力を、身心の癒しに役立てようという考え方は、数千年前の古代文明の時代にさかのぼります。
例えば、古代エジプトの壁画には、香油の壷や香炉を神にささげる人物が描かれており、「香り」の利用が当時の生活に根づいたものであったことを示しています。インダス文明の遺跡からは、精油(エッセンシャルオイル)を抽出するための器具が発見されたという記録もあります。

また、2〜3世紀の漢の時代にまとめられ5世紀末に再編された漢方の原典のひとつである「神農本草経」(しんのうほんぞうきょう)という書物には、「自然界で薬に使えるもの」として750種類の物質があげられていますがそのうちの多くは植物なのです。

古代の人々の植物活用方法を、そのまま現代に当てはめることはできませんが、アロマテラピーの根本をなす知恵は、人類の文明のスタートとともにあったと思われます。


■西洋医学とアロマテラピー
精油は医薬であり、芳香療法は医療であった。こう書くと驚かれる人もいるでしょう。しかし、西
洋医学の祖として知られるヒポクラテスや、「マテリア・メディカ(薬物誌)」(さまざまな薬物を研究、分類した本で、600種類もの植物が取り上げられています)を著した医師・ディオスコリデスらが活躍したロ―マ時代から18世紀にいたるまで、アロマテラピーはヨーロッパで医学の重要な柱だったのです。

薫香や浸剤(煎じて使う方法)が主体だった芳香利用の歴史の中で、大きな進歩の転機になったのは、11世紀のイブン・シーナ(アラビア人の哲学者・医学者)による精油蒸留法の確立でした。
イブ ン・シーナが著した「医学典範(カノン)」は、その 後長くヨーロッパの医科大学の教科書として使 われ、精油とその応用方法は、中世ヨーロッパ の修道院などで行われていた僧院医学さらには16世紀から盛んになったハーブ医学へと受け継 がれ発展したのです。

■現代のアロマテラピー
全盛期を迎えていたハーブ医学も19世紀にはいると科学の進歩とともに精油に代わり人工の化学物質が用いられるようになっていきました。再び精油が見直されるようになったのは20世紀になってからのことです。精油の実験中に負った火傷がラベンダーの精油で回復したという自らの体験をきっかけに、フランスの化学者ルネ・モ―リス・ガットフォセが、1928年ころに名付けたのが「アロマテラピー」という造語なのです。

また時期を同じくし、アロマテラピーは精油の殺菌、消炎など薬理作用を研究する医療的な色彩が濃くなっていきます。特にフランスではその傾向が強く、軍医として第二次世界大戦などに従軍した外科医ジャン・パルネは、精油から作った芳香薬剤で負傷者を治療した実体験をもとに多くの医師や薬剤師にその効果を伝えました。

現代のアロマテラピーは、いわゆる近代西洋医学とは一線を画し、大自然の力を穏やかに活用する療法として発展しています。マルグリット・モーリーは、精油を植物油に希釈してマッサージすることで身心のバランスを正常にするという方法論を示した生化学者で、彼女の著書「最も大切なもの…若さ」は、イギリスのア口マテラピーに多大な影響を与え、ホリスティック(全体的な)アロマテラピーのきっかけとなりました。

また、ロバート・ティスランドは、モーリー夫人ら先人の理論や方法論を体系的にまとめあげた人物で、その著書「芳香療法・理論と実際」は、母国イギリスだけでなく、日本のアロマテラピー界の発展にも大きな役割を果たしたといえます。このように長い歴史を歩んできたアロマテラピーは現代社会において、心身を癒してくれる代表的なものとして、注目されるのは、ストレスの増大のほか、地球環境や自然志向への関心の高まりといえるのではないでしょうか。


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香りと、体に対する働き

■匂いはどのように伝達されるのか
空気を鼻から吸うと、鼻腔(びくう)という鼻の穴の奥の広い空洞を通り、のどを通って肺に流れます。と同時にその空洞の一番上にある喚上皮(きゅうじょうひ)という、匂いを感じる器官に触れます。その部分には2000万個にものぼる神経細胞が集まっていて、情報が脳に伝えられ、その匂いがどんな種類のものなのか、判断されます。

◆鼻から脳へ
精油の成分が体の中へ入っていく経路で最も重要なのは、嗅覚を通して脳へと直接伝わるル―卜です。何かの香りをかぐと、その香りの成分は鼻の奥にある嗅細胞でキャッチされ、神経繊維を通して脳の大脳辺縁系へ伝わっていきます。

脳で最も大きい領域を占める大脳は、大脳新皮質と大脳辺縁系に分かれ、大脳新皮質が「考える」「判断する」などの知的活動をコントロールしているのに対して、大脳辺縁系は感情や本能的な活動を支配しています。さらに大脳辺縁系への情報は、自律神経系や内分泌系(本ルモン調節など)、免疫系をコントロールする視床下部に伝わります。

精油の成分も、この大脳辺縁系→視床下部というルートを伝わって作用します。元気づけたり、気分を落ち着かせたりいろいろいろな作用の理由については、すべてが解明されているわけではありませんが、私たちの本能や生理反応に直接働きかけて、心身のバランス確保に役立つのです。


■血液から全身へ
嗅覚以外からでは、精油が血液に混じって全身へ運ばれるという経路があり、精油をどう使うかによって3つのルートが考えられます。ひとつは、精油を希釈したオイルでトリートメントなどを行うときに、皮膚から吸収されて真皮層(表度の下にある組織)の血管やリンパ管に入るというルートです。あとの2つのルートは、芳香などで精油をかいだときの鼻粘膜からの吸収と、吸気とともに吸い込んだときの肺からの吸収です。

以上3つの血液を介したルートによって精油の成分が全身に回る仕組みは、精油を内服する場合と基本的には同じです。ただし、吸収される量が内服と比べると圧倒的に少なく体への影響はありません。また、消化器官を通さないため、胃腸を痛めるといった心配もありません。


匂いは慣れるもの
食べ物のよい匂いや鼻をつまみたくなるひどい臭いに対しては敏感に反応する嗅覚ですが、私たちは普段、匂いに対して無意識です。匂いを感じないということは、匂いがないということとは違います。人の家を訪れた時に最初は気になった部屋の香りが、次第にあまり気にならなくなったという経験があるでしょう。このように匂いは慣れてくるものだからです。嗅覚は非常に疲れやすいものでもあります。

香水など強い匂いを何種類も一度にかぐと、その後、正確に香りを区別できなくなります。また、体調によっても嗅覚は変わります。たとえば、女性の場合は、生理の時にいちばん匂いに敏感になります。香りをチェックする必要ががある時には、生理中を避ける方が、香りをより正確に判断することができます。


匂いは味ともつながりがある
匂いはまた、味とも密接につながっています。食べ物を口にしながら匂いをかいでいるからです。
口はのどの奥で鼻腔とつながっています。つまり、食べ物が口に入った時点で香りのもとを含んだ空気の一部が鼻腔に上り、神経を通って脳に行きます。

食べ物の味というのは、意識をしていなくても香りも含んだ味なのです。風邪をひいた時など、のどに炎症がある時や鼻の調子が悪い時には、食べ物の味が普段とは違って感じられることがあるでしょう。これはのどの炎症や風邪を原因とする様々な粘膜が、嗅覚を妨げているからです。
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